人は誰かに絶対的な力を持つとサディスティックになる。それは軍隊に限らない――。
戦時下の幼少期に日本の外国人強制収容所に入れられたイタリアの著名作家、ダーチャ・マライーニさん(87)が12日、都内で自らの体験を語った。
マライーニさんは1938年に来日した。父親のフォスコさんは、北海道帝国大学のアイヌ文化研究者。41年にはイタリア語教師として京都帝国大学に赴任した。
だが43年、日本の同盟国だったイタリアが連合国に降伏すると生活が一変した。ナチス・ドイツが連合国に対抗して樹立した傀儡(かいらい)政権「サロ共和国」への忠誠の宣誓を両親が拒否したため、日本では「敵国人」とみなされ、愛知の強制収容所に約2年間入れられた。
そこで待っていたのは、国家権力を盾にした官憲の暴力だった。
おなかをすかせた子どもの前に腐ったみかんを落として飛びつかせた。飢えて歯茎から血が出たり、髪が抜けたりするほど弱っていても壁のベンチに寄りかからせず、棒で殴ってきた。
精神的に追い詰めるのも常だった。イタリアから祖母のことを知らせる手紙が届き、読むのを心待ちにしていたところ「1週間待ちなさい」と言われ、1週間後に取りに行くと、目の前でびりびりにやぶかれたという。
「(官憲は)人の心を傷つけ…